過活動膀胱

「過活動膀胱(over active bladder;OAB)」は自覚症状に基づいて診断されるようになった新しい疾患概念です。

過活動膀胱

過活動膀胱は尿意切迫感(急に起こる、抑えられないような強い尿意で、がまんする事が困難)を必須とした症状症候群であり、通常頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあります。その程度は質問表で評価します。

正常な排尿と過活動膀胱

正常な排尿の場合はじめ膀胱を収縮させる排尿筋は緩んでおり、膀胱の出口の尿道括約筋はしっかり閉まって漏れないようになっています。ある程度尿がたまるとその情報が尿意として脳に伝えられ、脳から排尿命令が出ると排尿筋が収縮し、また尿道括約筋が緩んで排尿が始まります。ところが脳から排尿命令が出ていないにもかかわらず排尿筋が不随意収縮(自分の意に反した収縮)を起こす事があります。そのためにがまんできない尿意切迫感を感じ、この状態が過活動膀胱なわけです。

【正常な排尿】
【過活動膀胱】

病因

過活動膀胱の原因として、脳や脊髄の神経系トラブル、前立腺肥大症など尿道の閉塞に伴うもの、加齢、骨盤底のき弱化によるものなどがあります。膀胱、前立腺およびその周囲に癌、結石、炎症があるもの、他多尿、心因性頻尿などは除外されます。

疾学

最近の調査によると排尿回数1日8回以上、尿意切迫感が週1回以上を過活動膀胱とした場合、40歳以上の8人に1人、80歳以上では3人に1人に過活動膀胱の症状を認め、800万人以上の患者がいます。その半分以上の人が生活に影響があると感じているものの、実際病院を受診する人は4人に1人で、さらに女性では10人に1人以下となっています。「恥ずかしい」、「年だから」、「病気じゃない」と考えている人がいかに多いのかがわかります。

治療

過活動膀胱の治療は薬物療法が中心で、行動療法と合わせて行われています。
薬物療法で最も一般的に使われているのが効コリン薬といわれているもので、膀胱の異常な収縮を抑える作用があります。口渇、便秘などの副作用があります が、最近のものは副作用も少なくなってきています。排尿困難を伴う場合、残尿が増加することがあり注意が必要です。

QOL(生活の質)

過活動膀胱でみられる尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの症状は日常生活のさまざまな活動に支障を及ぼします。仕事、家事、スポーツ、旅行、などのほか 精神面への影響も少なくありません。投薬などの治療により改善することが多く、恥ずかしがらず、あきらめずに受診することをお勧めいたします。